神戸で阪神大震災にあった美容師安井秀治さんのブログ記事です。
実際に震災にあった経験から、どんな援助やボランティアがありがたいのかなど、書かれています。
長いですがぜひご一読下さい。


<<<以下、ブログよりコピペです>>>


東日本大震災の被災地へのボランティアを考える人も多いかと思います。
案外難しいのがこのボランティアです。

僕たちが被災した時を思い出してみると、なお、人を助ける事の難しさを感じます。

たとえばテレビを見ていると被災地のかたがたへのインタビューだと
「毛布が欲しいです」
というコメントが多いです。

当然、「毛布を差し上げたい」と思われる方も多いと思います。

しかし、なぜ被災地に毛布が不足しているのかというと、もちろん、津波で無くなったからという理由が一番ですが、もうひとつ「運び込む事が間に合っていない」という問題があるわけです。

同じ寄付でも、

「貧しい国に寄付をする」のと「被災地に寄付をする」

のでは、やり方がぜんぜん違うのではないでしょうか。


毛布を宅急便で送って普通に届くくらいなら誰も毛布に困らないわけですし、市役所に衣類を送って簡単に分配できるくらいなら、衣類に不足している人もいません。

「物資を運ぶこと」自体が間に合わないのですから、わざわざ「行く」というのは物資を運び込む車の邪魔になるだけです。

それに実際、陸続きの被災していない街から、行政や業者が必死になって生活物資を運ぶのですから、食料や衣類が行き届くのにそうも時間はかかりません。

現に阪神大震災のときも、ほんの数日で食料は集まりましたし、餓死した人はいなかったと思います。


僕らが被災したときも、せっかく送っていただいた救援物資は、通常のスーパーなどで何でも普通に売っている状態になってから、やっと配られました。

僕の家のドアノブに配給された物資が吊るされてあり、紙おむつや、ナプキンなど僕には必要のないものがたくさん入っていました。

その頃には、もうスーパーで普通に売られているわけですから、わざわざ隣近所に配るのも変だし結局、水がなくて雑巾をあらえなかったので、それらの物資は掃除用具として利用するしかありませんでした、

しかしせっかく送ってもらった「人の善意」で床を拭く、というのは何とも罪悪感を感じたりしたものです。


では、現地に行って「何かができるか」、ですが、


まず、理解していただきたいのは、被災者全員が怪我をしているわけではありません。


単に「力仕事を手伝う」とかなら、被災者自信で出来る人がたくさんいるのです。

その元気な方でさえも「食料を確保し、寝どころを確保し、トイレを確保し、風呂に入る」

事に一苦労しています。つまり「行っても仕方ない」のです。

現地に行ったボランティアが「食事をし、どこかで睡眠をとり、トイレに入る」のなら、それ自体が邪魔になって仕方ありません。

結局現地に誰かがむやみに行っても、「困っている人が1人増える」だけにすぎないのです。

行く事で感謝されるのは「医師、看護士、介護士」など、特殊な技術を持った人に限られるでしょう。

そういった技術がある人で、時間に余裕のある人は、ぜひ行ってあげたほうがいいでしょう。
きっとけが人、病人、ろくな手当てが受けられない方がたくさんいらっっしゃいますから。

もっとも、そういった職業の方は普段から怪我や病気の人を助ける事に追われているわけですから、現地にいける方は限られているとは思いますが。


美容師が行っても邪魔です。どうせ設備が無いのですから、髪を切る以外できません。それに現地には、怪我もなく、倒壊して店が無くなった美容師がたくさんいます。


「無料で髪を切ってもらえた人」にはお礼は言ってもらえるとは思いますが、その美容師がどこかで食事をし、トイレに入り、睡眠をとるのなら、全体的に見れば邪魔でしかありません。 数人の髪がスッキリするメリットとは全く割に合わないのです。

もし「サロンのPRになるから行きたい」という美容師がいるなら、食料やトイレが安定した、もっと落ち着いた状態になってから行けばよいでしょう。

ただし、そのときに髪を切って差し上げる対象は絶対に「お年寄りや子供、体の不自由な人、お金が全くない人」に限定すべきです。

なぜなら被災地の美容師も復興しなければならないからです。
被災地の美容師はお客様集めからやり直しなのですから、外から入った美容師「ボランティア」と称してが現地の美容師の仕事を奪うのは、単に営業妨害であり、現地の美容師の復興の妨げにしかならないからです。

被災当時、外部からやってきて、避難所を巡回しては健常者の髪を切っているボランティアを見て、「はやく出て行け」としか思いませんでした。
「こんなことして店の宣伝でもしたいのか」
というのが率直な感想でした。テレビやら新聞で「サロン名」が取り上げられたいからボランティアをしているサロンも、絶対にあったと思います。

繰り返し申し上げますが、ボランティアがやりたい美容師は絶対に「普通に美容室にいけない人」だけを対象に行ってください。


被災地の美容師には復興が必要なのです。邪魔しちゃいけません。


現地の美容師は今後の生活に不安を抱えるのは必至ですから、

自分のサロンのことだけを考えて災害に乗じた売名行為は至って「アンフェア」です。




特に大手にありがちな「宣伝第一」の偽善サロンにはこのことを強く訴えたい。



全国的に資金力のある美容室が、むやみにボランティアして回ったり、料金を格安や無料にすることで、地元基盤の美容師が壊滅的打撃を受けます。
しかしマスコミはそれを「美談」としてとりあげるでしょう。


しかし全国規模のサロンは、他の地域にも資金力があるので被災地の料金を無料にして話題集めをしても、スタッフに給料を支払えるのです。


現地のサロンの多くはやむなく同調して倒産したり、廃業する羽目になるでしょう。

せっかく建物が無事だったサロンまで倒産するのです。


「わかっていて」そういったPRをするサロンは残念ながら現れるでしょう。



結局、今、我々が、何かを送ったり、行ったりする事が特に何の役にもたたない、これが現実です。


今は、生きるので精一杯の被災者ですが、もう数週間もしないうちに「これからどうするのか」という現実に直面する事になるでしょう。


僕らも最初は「生きているだけで満足」でしたが、あっという間に次の問題に直面します。


特に、テレビで放送される「被災地のニュース」が減ってきたあたりから、違う問題で人々が困りはじめます。



結局いくらあっても困らないのは「現金」です。


これだけ多くの方が被災すると、義捐金を分配しても1人あたりが受け取るお金はすごく少なくなるでしょう。

阪神大震災でも、家が全壊した人が受け取った義捐金の分配金がわずか「20万円」。
ローンを組んで家を建て直さなきゃいけないのに、20万円なんてぜんぜん足りません。


今回の災害は阪神大震災より範囲が広く、被災者の数が半端ではありませんから、我々が必死で寄付をしてもぜんぜん足りないでしょう。



被災者は、何の責任もないのに、自分の労力と自分の資金で生活を立て直さなければならないのです。


僕らが被災したときも外部の人は、僕らが被災して数日間は「強い関心」をもってくださいましたが、1ヶ月たつと、皆、無関心になっている印象でした。

じっさい、関西以外では「被災地のニュースはほとんど流れていない」という噂でしたし。

人々は、家が潰れる映像には興味を持って反応しますが、「徐々に復興しているニュース」ではおそらく「視聴率」が取れないのでしょう。


でも被災者はこれからが大変なのです。


本当に「助けてあげたい」と思うなら、お金を寄付するのが一番いいのではないか、と僕は思います。


同感です。貴重な言葉です。
僕も兵庫県尼崎出身です。阪神淡路大震災時、東京に居ましたので震災時の恐ろしさはわかりませんが
実家は被災し、今回は地震の恐ろしさを感じました。
教訓という言葉がありますが、こういった被災者の方々の教訓を活かさなくてはなりませんし
後世に教訓を残していかなくてはならないと思います。